プリズナートレーニングの続編

元囚人ポール・ウェイドが監獄生活を通じて自重トレーニング(キャリステニクス)を体系化した「プリズナートレーニング」には、続編があります。2012年8月15日に発売された「Convict Conditioning 2: Advanced Prison Training Tactics for Muscle Gain, Fat Loss and Bulletproof Joints」です。

 

 

その日本語版が、2018年3月27日やっと発行されました。題名は、「プリズナートレーニング 超絶!!グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ」。

 

 

今回も、日本語訳の表紙はかなりどギツイですね。

 

プリズナートレーニング2

 

でも、カバーを外してしまえば「プリズナートレーニング」と同じように、茶系の地味なデザインなので持ち歩けないことはありません。

 

プリズナートレーニング2

プリズナートレーニング2の評価や評判

やはり、前作のファンによる高評価が多いようです。前作では次のような6つのトレーニングについてそれぞれ解説されビッグ6と呼ばれていましたが、今回はそれを補うトレーニングだけでなく、ストレッチや食事、さらに怪我への対処法やモチベーション維持などまで話が広がっていきます。

  1. 腕立て伏せ:PUSHUP
  2. スクワット:SQUAT
  3. 懸垂:PULLUP
  4. 腹筋:LEG RAISE
  5. ブリッジ:BRIDGE
  6. 逆立ち:HANDSTAND PUSHUP

 

ただし、章立ての分かりにくさとトレーニング写真の古臭さは相変わらずです。(笑)

 

プロテイン不要論の説明等では一部数字を使って説明している個所もありますが、科学的な筋トレ解説書というより自重トレーニングの実践マニュアルです。

 

マシンやウェイトを使った近代的なトレーニングを否定する立場を一貫して取っていますが、経験に基づいた内容にはそれなりに説得力がありますし、学ぶべき点も多いでしょう。

プリズナートレーニング2の内容

プリズナートレーニング2は、主に3つのパートからなっています。

  1. 追加トレーニング
  2. 能動的ストレッチ
  3. 実践ノウハウ

 

追加トレーニング

前作で解説されたビッグ6に、4つのトレーニングが追加されました。

  • 握力
  • 体側
  • ふくらはぎ

 

著者のボール・ウェイドは、ここで鍛える前腕、腹斜筋、首、ふくらはぎを「ショットガンマッスル」と呼んでいます。前作のビッグ6が対象としている胸、上腕、背中、腹筋、太ももなどの主要な筋肉に対して、ショットガンマッスルはそれらを補佐する筋肉です。

 

握力

握力強化にはかなりのページが割かれていますが、解説されているトレーニングは「ぶら下がり」と「指先腕立て伏せ」の二つ。ぶら下がりで手を閉じる筋肉と腱を鍛え、指先腕立て伏せでそれと拮抗する手を開く筋肉と腱を鍛える、という組み合わせです。

 

ぶら下がりは、二つ折りのタオルに片手でぶら下がったり、薬指と小指だけでバーにぶら下がったり、離れ業があったりと、かなり高度なゴールが設定されています。基本的に著者はマシンやウェイトなどの器具の使用を否定していますが、ぶら下がりにはどうしても丈夫なバーが必要になります。

 

指先腕立て伏せの方は、前作で解説されていた腕立て伏せの10ステップを指を立てた状態で行うだけです。「だけ」と言っても、指を立てた状態で片手で腕立て伏せするのは超人技ですが。

 

体側

腹斜筋だけでなく、体の側面に連なっている広背筋、鋸筋、肋間筋、外転筋、張筋などの全体を鍛えます。著者はこの一連の筋肉群を「ラテラルチェーン」と呼んでいます。

 

解説されているトレーニングは、垂直な棒に腕を絡め旗のように体を水平に保つ「フラッグ」と呼ばれるものです。垂直な棒に胸を付けて抱きつくようにするクラッチフラッグと、垂直な棒に両手だけで体を支えるプレスフラッグという2種類があります。

 

それぞれ8つのステップが用意されていて、最後は体を完全に水平に保つフラッグができるよう解説されていますが、地道に全身の筋力アップを続けない限りゴールにはたどり着けないでしょう。

 

首のトレーニングは、主に二つのブリッジでできあがっています。頭と足だけで支える、後ろ向きのブリッジ(レスラーブリッジ)と前向きのブリッジ(フロントブリッジ)です。

 

首のトレーニングと言っても、これは腹筋や背筋がかなり強くないとシンドイ。ブリッジを維持するには、筋力だけでなく体の柔軟性も必要なので、フロントブリッジをするための4段階に分けた柔軟トレーニングが解説されています。

 

ふくらはぎ

ふくらはぎのトレーニングと言えば、立った状態でかかとを上げ下げするカルフレイズ(ヒールレイズ)をすぐに思いつきますが、ウェイトを使わずにこれだけの種類のトレーニングはなかなか思いつきません。プリズナートレーニング2では、カルフレイズの強度を上げる3つの方法が紹介されています。

  • 床面でやるか、階段でやるか
  • 両足でやるか、片足でやるか
  • 膝を曲げてやるか、伸ばしてやるか

 

これだけでも、2×2×2=8種類の組み合わせができますが、さらに回数を増やし、セット数を増やし、インターバル時間を短くすることによって負荷を上げることができます。特に3番目の膝の曲げ伸ばしでふくらはぎへの負荷がこれだけ変わることは、やってみないと分かりません。

 

能動的ストレッチ

ポール・ウェイドは、ストレッチを受動的ストレッチと能動的ストレッチの2つに分けています。どちらも関節の稼働域を広げるのが目的ですが、違いは受動的ストレッチがウェイトなどの外力を使うのに対して、能動的ストレッチは自分の筋力を使うところです。

 

ストレッチの説明のところで、関節を稼働域の限界でしばらく維持する静的ストレッチと準備運動のように体を動かしながら行う動的ストレッチとをご紹介しましたが、その静的ストレッチ/動的ストレッチの区分と、この受動的ストレッチ/能動的ストレッチの区分は一致しません。

 

著者は、受動的ストレッチはむしろ怪我をしやすくなるとして、安全で筋力を高める能動的ストレッチを勧めていますが、受動的ストレッチにも怪我した部分の治癒を促したり老廃物を取り除く助けとして価値を認めています。

 

トリフェクタ
  1. ブリッジホールド
  2. Lホールド
  3. ツイストホールド

 

能動的ストレッチの具体的な方法として、体の背面を収縮させるブリッジホールド、体の全面を収縮させるLホールド、体の側面を収縮させるツイストホールドの3つを「トリフェクタ」と名付け、それぞれを5つのステップに分けて詳しく解説しています。

 

Lホールドの説明の中では、日本の合気道や古流柔術などの武道が紹介され、話が切腹にまで及んでいるところはちょっと驚かされます。ポール・ウェイドがいた監獄に日本の武道家がいたのかもしれません。

 

実践ノウハウ

最後に著者のポール・ウェイドが監獄で自重トレーニングを続けている間に、多くの先陣から学んだ知恵や経験を通して得たノウハウなどを紹介しています。

  • 規律の大切さ
  • ステロイドの真実
  • 食事メニュー
  • プロテインの要否
  • 怪我への対処法
  • モチベーション維持

 

どれも経験に基づいた話なので一読の価値はありますが、特に私は現在腱鞘炎に悩んでいることもあって怪我への対処法はかなり参考になりました。

プリズナートレーニング外伝

2019年2月27日に、さらに続編の「監獄式ボディビルディング プリズナートレーニング外伝」が発刊されました。

 

 

 

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